Waseda University | Faculty of Human Sciences

Research Project

共通入力下での
観客間相互作用の
モデル化

共通の入力としてのパフォーマンスを受け取る観客どうしのインタラクションをモデル化し, 情動伝播のダイナミクスを理解します。

Overview

研究の内容

このプロジェクトでは,観客の反応が,パフォーマンスという共通入力によってどのように駆動されるのかをモデル化します。劇場やライブ会場では,複数の観客が同じパフォーマンスを受け取るため,観客間の同期や類似した反応には,観客どうしの相互作用だけでなく,共通入力の影響も含まれます。

そのため,観客の反応を分析する際には,「誰かの反応が別の観客に影響した」のか,「同じパフォーマンスが複数の観客に同時に作用した」のかを区別する必要があります。本研究では,観測された反応時系列から,共通入力や観客間相互作用を推定するための方法を検討します。

代表的な研究として,superposed recurrence plot (SRP) を用いて,複数の応答系列から共通入力を再構成する研究があります。この研究では,性質のよくわかっている神経細胞の数理モデルを用いて,出力としての発火データから,共通して作用した入力を再構成する枠組みを提案しました (Nomura et al., 2022, Physical Review E)。

この枠組みを劇場研究へ展開することで,瞬目,心拍,身体運動などの観客反応から,パフォーマンスのどの部分が観客の反応を引き起こしたのかを推定することが可能になります。観客の反応を単なる結果として扱うのではなく,パフォーマンス入力を推定する手がかりとして利用する点に特徴があります。

Results

代表的な結果

瞬目時系列から再構成した時間変化する共通入力

瞬目反応からの共通入力の再構成

複数の視聴者の瞬目開始時系列から,SPRを用いて,瞬目同期を誘発した時間変化する共通入力を再構成した例です。下段のラスタープロットは各時点の瞬目開始時刻を示し,折れ線はそれぞれ埋め込み次元を変えて再構成された入力時系列を示しています。

出典:Nomura, R. and Sato, G. (2025). Reconstruction of time-varying appeal inputs that induce blink rate synchrony. Proceedings of CogSci 2025, V4-N-52.

Key Points

研究のポイント

共通入力と相互作用を切り分ける

複数の観客に似た反応が生じるとき,その類似性は観客間の影響だけでなく,共通のパフォーマンス入力によっても生じます。両者を区別することで,劇場における情動伝播をより精密に理解できます。

観客反応からパフォーマンスを読み解く

観客の瞬目,心拍,身体運動などの反応は,パフォーマンスのどこが観客に作用したのかを示す手がかりになります。反応時系列を用いることで,パフォーマンス入力を再構成することができます。

劇場研究をシステムとして捉える

パフォーマンス,観客,空間,反応の時間発展を一つのシステムとして扱うことで,個別の反応記述を超えて,劇場コミュニケーションのダイナミクスをモデル化できます。

References

引用文献

Nomura, R., Fujiwara, K. & Ikeguchi, T. (2022). Superposed recurrence plots for reconstructing a common input applied to neurons. Physical Review E, 106:034205. DOI

野村亮太 (2021.9) 表現研究におけるシステム論的な分析単位―再構成された共通入力を用いて― 日本認知科学会第38回 OS14「芸術を情報で現す意味」.

Nomura, R. (2021.3). Recurrence-based reconstruction of performer's input with using audience's blink responses. Online liveness symposium: Conceptualising, practicing, and measuring liveness. Goldsmiths, University of London, UK.

Nomura, R. and Sato, G. (2025.8). Reconstruction of time-varying appeal inputs that induce blink rate synchrony. In the proceedings of CogSci2025, V4-N-52.

木村真実・野村亮太 (2022.3) 人の心を動かす音楽の力の再構成 情報処理学会第84回大会, 5T-06.(2022.03.04)

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