視聴者の注意を集合的に捉える
複数の視聴者の視線を同時に扱うことで,映像のどこが共有して注目されるのか,どこで視聴者の探索が分岐するのかを,集合的な視聴行動として捉えることができます。
このプロジェクトでは,映像を視聴する複数の視聴者の視線行動を測定し,集合的な視線分布や視線移動の特徴を解析します。映像のどこを見ているのか,視線がどの程度集中するのか,あるいは視線がどの方向へ展開するのかを調べることで,映像表現が共通した行動パターンを引き起こす程度という観点で動画の特徴量を算出します。
視線行動は,視聴者が映像のどの要素に注意を向け,どのように意味を探索しているのかを示す重要な手がかりです。本研究では,複数の視聴者に共通して現れる集合的な視線行動を捉えることで,映像が有するの訴求力に関わる特徴を分析します。
代表的な研究として,少人数の視聴者の集合的な視線特性から,映像の離脱率を予測する研究があります。この研究では,視線の空間的な広がりや移動方向のまとまりを指標化し,映像視聴中に生じる集合的な探索行動と視聴行動の関係を検討しました。
また,映像や話芸の鑑賞時には,視線だけでなく瞬目も重要な反応として現れます。瞬目同期や瞬目率の変動は,物語世界への没入や,視聴者間で共有される認知的・情動的反応を示す指標として利用できます。翻って,こうした振る舞いを引き起こすことができる演者の熟達の指標の一つとして利用できると考えられます。
複数の観客の視線データの重ね合わせ。動画の内容に誘導され,視聴者の視線は浅間山の火口に集中していることがわかります。
出典:小諸市PR動画第1弾 小諸がアツ・イー!本篇 (0:00:10時点)
複数の視聴者の視線を同時に扱うことで,映像のどこが共有して注目されるのか,どこで視聴者の探索が分岐するのかを,集合的な視聴行動として捉えることができます。
視線分布や視線移動の変化を時系列として解析することで,映像のどの場面が興味を喚起し,どの場面が離脱や没入に関わるのかを検討できます。
視線行動と瞬目反応を組み合わせることで,視聴者の注意,認知的負荷,物語世界への没入など,主観評価だけでは捉えにくい鑑賞体験の時間発展を分析できます。
Nomura, R. and Sato, G. (2025.8). Reconstruction of time-varying appeal inputs that induce blink rate synchrony. In the proceedings of CogSci2025, V4-N-52.
Nomura, R., Sato, G., Sekine, K., and Shimizu, Y. (2024.7). Predicting viewer withdrawal rate using the collective gaze property of a small number of viewers. In the Proceedings of International Congress of Psychology 2024, Prague, Czech Republic. July 21–26, 2024.
Nomura, R., Liang, Y., & Okada, T. (2015). Interactions among collective spectators facilitate eyeblink synchronization. PLOS ONE, 10(10):e0140774.
Nomura, R., Hino, K., Shimazu, M., Liang, Y., & Okada, T. (2015). Emotionally excited eyeblink-rate variability predicts an experience of transportation into the narrative world. Frontiers in Psychology, 6:447. doi: 10.3389/fpsyg.2015.00447
野村亮太・岡田猛 (2014) 話芸鑑賞時の自発的なまばたきの同期. 認知科学, 21(2), 226–244.